むかしむかし洋裁の先生だったおばあちゃん。
幼いころ、ピアノの発表会や七五三、入学式など、特別な日のワンピースはいつもおばあちゃん製でした。
歳をとってからはすっかりお裁縫に向かう姿を見ることがなくなってしまい、
もう目が見えないからとか、忘れちゃったんだよ、とかそんな言葉を口にするようになりました。
いつか、おばあちゃんが編み糸を買ってきてほしいと私にお願いしてきてくれたことがありました。何かいただいたときに、ちょっとしたものを編んでお礼にプレゼントするんだよと話してくれました。
バスに乗って行く場所にある手芸屋さんは、おばあちゃんにとってとても遠い場所になってしまったんだということに切なさを感じながら、それでも頼ってくれたこと、また何か作る気持ちになってくれたことが嬉しくて、はりきってムーリットのお店に向かいました。
おばあちゃんのオーダーは明るい色。
元気になれそうな、かぎ針によさそうな糸をスタッフに相談しながらいくつか選んで送りました。
耳が遠くなってからは、電話で話すことが難しくなってしまい、会えない間は手紙や贈りもので気持ちを届けました。さみしくないといいなと願いながら。
去年、突然やってきたおばあちゃんとの別れ。
おばあちゃんの部屋を整理していたら私とやりとりした手紙や写真が大事にしまってありました。直接会えなくても私の気持ち、届いていたかなと思えて少しだけ安心しました。
私が送った糸たちは見当たらなかったから、きっとおばあちゃんの気持ちは形を変えて誰かのもとに届けられたのだと思います。
スタッフ manabe
クラフト部デザイン担当。
使うかはさておき、リボンや包装紙、カードなど、ラッピングに関するアイテムがすきです。おくりものをするときには、まずテーマを決めてあれこれ考えます。悩みながらもその時間がとてもすきです。
さらっとさりげないおくりものができるそんなひとに憧れています。